ルーンの子供たち DEMONIC

ルーンの子供たち DEMONIC〈4〉

ルーンの子供たち DEMONIC〈4〉

 4巻。大きく展開しました。ジョシュアがもう一人の自分と対決することがこのお話のメインだと思っていたのですが、ジョシュアはその上を行ってしまいました。人形を仕組んだテオが亡くなっても、問題はなにも終わってはいなくて、むしろ大きくなっているとさえ思えます。3巻でペリウィンクル島でのほのぼのとしたシーンが描かれていますが、その意味がここまできてやっと理解できました。ジョシュアにとってあの時間がなければ、自分が生きるということにさえ執着しなかったし、もう一人の自分を生かそうと思うこともなかったでしょう。彼にとって人々との触れ合いは自分がどういう立場なのかを客観的に見ることのできる時間でした。人形により胸を貫かれ、瀕死の状態になったジョシュアの身体を救ったのは彼を必要とする霊たちでしたが、彼の意識が戻ったのは彼の意志。それだけ大きなものがこの旅の中で彼の中に生まれたということが一番の違いだと思います。そして、人形を生かすための方法と願いを叶えるためにネニャフルを訪れる2人。大きな魔法が動き出しそう。
 そして、ジョシュアが知らないところで『民衆の友』とアルニム家との情報合戦も始まっているようだし、国王も絡んできているんでしょうか。ランジエ編もどんどん動いています。ひさびさにランズミも出てきましたし、前作に繋がる部分がいろいろ出てきているので、楽しみです。カナポリの魔法という大きなものが間に挟まってはいますが、いろんなところで政治的な思惑も見え隠れします。ジョシュアは直接そちらに気をとられてはいませんが、巻き込まれるのは必至。
 ジョシュアとマキシミンのヴァイオリンによるチャント作成のあたりはほのぼの。2人の協力による曲づくり。ラストに向けた最終兵器になりそう。そして、リチェは「仕事人」との戦いですごい行動に出てました。彼女の行動力はほんとにすごい。ジョシュアに語りかけるシーンや乗馬デートなど恋愛めいたところも見逃せないです。この2人どうなるんでしょう。

ルーンの子供たち DEMONIC〈5〉

ルーンの子供たち DEMONIC〈5〉

 5巻。最終巻です。ランジエを助けるためにジスカール登場。ヒスファニエとのやりとりはこれからを暗示しており、未来の世界を大きく変える言動。ジョシュアとランジエなしには実現し得ないような非常に可能性が低い未来のように思える。思惑と駆け引きに満ちた会話のあとは、ネフニャルでの寮生活。ボリスにルシアンが登場して一気に華やかに。ジョシュアは人形であるもう一人のカルディと伴にに入学し、この2人とマキシミンとの3人の関係は非常に複雑になった。ただ、ルシアンとマキシミンがいるので、楽しいことも起こらないはずがない。パイ投げしているジョシュアはものすごく楽しそうだ。
 人形のカルディは崩壊の兆しが見え、その精神も危ういものとなっていた。人形遣いはジョシュアを本体にし、人形を直そうとするがジョシュアは彼の仲間たち、そしてカルディによって救われた。最後にカルディを友としたマキシミン、最後までカルディのことを思ったジョシュア。ジョシュアとカルディとの関係は非常に複雑で、お互いの存在があったからこそ、お互いに見えたものがたくさんあったのではないかと思う。ジョシュアは公爵としての自分を受け止めることができた。その立場は以前は窮屈なものと感じられたかもしれないが、それが彼にとって大きな意味のあることだとわかったのだ。そして、カルディは人として大きな感情を持った。愛がどれほど大きくて、大切であるか、それを知った。双子よりも結びつき、だからこそ自分の幸せだけを願うことができない存在だったのだと思う。その特殊な能力ゆえにすべてを忘れることもできず、抱えていくしかないという重さ。いつか、2人が2人とも笑える世界になるといい。
 そして、ジョシュアの命を救ったケルスが自分と同化してしまう前にどうしても願いを叶えなければならないと夕焼け島に行く。願いの鏡が見せた記憶の世界は幸せに満ちていた。そして、ジョシュアたちを導いたのはボリスだった。冬の剣と神聖チャント。ボリスがいなければ、この願いは叶えることはできなかっただろう。ラストにランジエがネフニャルに入学してくる。この4人とランジエ。役者は揃いつつある。
 リチェの出番が少なかったのは残念。でも、最後大胆なことをしたり、ジョシュアに抱きしめられたり存在感は十分。ティチエルは思っていたよりもお姉さんなキャラクターになっていたように思うが、失敗して泣き出しちゃったりするところはかわいい。それに、このメンバーになくてはならない存在だし、魔法はいつでも有効。3部作のラストは少し年齢が高くなるようなので、かなり楽しみ。いままでに出てこなかった人が主人公とのことなので、イスピンとかアナイスとかかなぁ。気長に待っていたいです。