◆幼馴染のあの子。

 偶然、駅で幼馴染(女性)を見かけた。随分、長く会っていないので、その子かどうか迷ってしまった。私が最後にその子に会ったのは高校生のときだったから、時が経ちすぎている。でも、横顔に面影があって、持っている鞄や服もあか抜けていて、こんな地方都市にはいないような洗練ぶりだったから、たぶん、あの子なんだろうと思う。
 小学校のときは仲がよくて、一緒に勉強したり、家を行き来していたのだけど、根本的に興味の向く方向や考え方が違っていたのだと思う。中学の頃にはあまり話さないようになってしまっていた。彼女はどちらかというと、クラスの中でセンスがよくてあか抜けたタイプ。わたしは、おせっかい焼きの田舎娘。そんな感じで派閥が違ってしまっていたのだ。
 声をかけようかなと思ったのだけど、私が酔っ払っていたのと(飲み会帰りだった)、彼女が携帯電話を触っていたのとで、そのタイミングを逃してしまった。でも、幼馴染のあの子が今も変わらずがんばっているんだなぁって思うだけで、なんとなく、うれしかったりした。住んでいる場所も仕事も全然違ってしまったけれど、同じ空の下で同じようにがんばっている。そして、同じ時間に、同じ駅で降りたりする。そんな偶然もあったりする。
 時間が経つのは早いけど、みんなそれぞれの人生を生きている。