ルーンの子供たち ウィンタラー

ルーンの子供たち 1 冬の剣

ルーンの子供たち 1 冬の剣

 オンラインゲームテイルズウィーバーの原作小説ということだったが、一つの作品として独立しているようだ。ゲームの内容について全く知らなかったが、小説として面白かった。主人公は12歳の少年ボリス。彼の尊敬する兄イェーフネン(主人公級にかっこいい)のだが、彼は化け物に取り憑かれて自害してしまう。兄の形見である名刀ウインタラーを持ってなんとか生き延びようとするが、名刀中の名刀のため、様々な人に騙され、生きる希望を失ってしまう。そんな中に出逢った剣の師匠やまったく正反対の性格のランジエという少年によって、ボリスは新たな希望を見いだそうとする。一人の少年が自分の力で立ち上がり、次の一歩を踏み出すまでのストーリー。劇的なことは起こらないが、どこかヒヤリとした雰囲気の中で静かに進んでいく。主人公は地味めなキャラクター。脇に出てくる人物は相当個性的だ。ボリスの本領発揮はこれからだと期待したい。

ルーンの子供たち 2 冬の剣 消えることのない血

ルーンの子供たち 2 冬の剣 消えることのない血

 ボリスの師匠ナウプリオンと伴に巡礼者の島に渡る。その島は外界から閉ざされており、独特の慣習が根付いていた。ボリスはイソレットに恋をするが、イソレットはナウプリオンと過去に何かあったようであり、屈折するばかりだった。その島でボリスはウィンタラーの力の底知れなさを見せつけられる。1巻は追われることによる緊迫感があったが、2巻は穏やかな中にもじわじわと秘密が織り混ぜられていた。異世界の存在など、思った以上にストーリーに大きさが出てきた。恋に剣にとボリスが成長していく姿が描かれている。特に恋はちょっとじれったいほどだ。イソレットが主人公以上に素敵。

ルーンの子供たち 3 冬の剣 夜明けを選べ

ルーンの子供たち 3 冬の剣 夜明けを選べ

 最終巻。この島の真実を知り、また策略にも巻き込まれて、ボリスは島を後にする。師匠やイソレットとの別れは彼に大きな打撃を与えるが、ウィンタラーの生まれた場所で、その剣を持つことの意味を再確認したボリスは迷いがなくなった。人生の岐路の一つであった場所に戻り、別の人生を歩き始めるボリス。最後の戦いは彼の人生を決定づけたあの湖だった。その戦いの中でもボリスは生きていこうとしていた。それまで、生きているのに希望も持たず、ただ誰かの指し示した道を歩んできたにすぎなかった彼が、自分の意志で自分の行く道を決め、そして生きていこうとしていた。だからこそ、凄惨な戦いの中で生き残れたのだろうと思う。沈黙のチャントによる告白シーンも切ない。イソレットとボリスの恋の行方の今後は描かれることがあるのだろうか、想像はできるけれど。3巻で登場した人物ではナヤトレイが魅力的。

 ゲームの登場人物紹介を読んだところではイソレットは出てきていないようなので残念。あの8人の中ではティチエルに興味があります。天真爛漫な魔法少女ってくすぐられる。