うたもの、とか。

 私が気に入っている児童書を紹介します。歌がテーマの児童書はそれだけですごく魅力的。海洋冒険モノも好きです。

ライアルと5つの魔法の歌

ライアルと5つの魔法の歌

 歌使いが住む世界。歌使いは5つの歌を使い人間の感情をコントロールできる。歌使いの訓練を受けているライアルは、浜辺で恐ろしい言葉を聞いた。それは海に住むマーリーたちの言葉だった。
 しっかりとしたせ界が構築されているので、まずは手引きを最初に読むことが必須。その世界では常識のことなので、それを常識のように受けとってこそ面白さがあるのでしょう。個人的にやられたなと思う作品でした。わたしが以前に少しだけ同じようなお話を思い描いていたときがあるので、こういうふうに膨らませて面白くできるんだということを見せつけられた気がしました。登場人物も主人公のライアルにライバルのケロンなど、多彩な人物ばかり。その1人1人がストーリー上、重要になってきます。ライアルは怖い思いもし、大変な冒険をすることになるのですが、最後までしっかりと自分の意思を貫いています。歌はホントにいろんなものを動かすチカラがあると思います。大きなチカラを使うためには、それだけの精神力が必要です。その精神力はその過程でいろんなものに傷つけられてこそ、みつけられるのでしょう。その原動力になる希望が見える気がします。

幽霊船から来た少年 (ハリネズミの本箱)

幽霊船から来た少年 (ハリネズミの本箱)

 フライング・ダッチマン号に乗りこんだネブは話すことができなかった。厳しい環境のなか航海を続けていたが、嵐に遭い海に沈んでしまう。そこから逃げ出したネブと親友の犬デンは島に辿りつく。少年と犬はそれから何年にも渡り旅を続けることになる。
 少年がなぜ年と取らずに旅を続けているのか、それがわかる最初の「船の巻」、そして「村の巻」では謎解きが楽しめます。最初の「船の巻」では本当に厳しい船での生活が語られているので、あまり読み進めることができませんでしたが、「村の巻」での謎解きは続きが気になって読みつづけてしまいました。どこか違って見える少年、そしてかしこい犬の二人がこれからどんな冒険をしていくのかとても楽しみです。なんといっても時代に捕らわれないところが楽しみの1つです。いろんな時代でいろんなことをしてくれるのではないかという期待が膨らみます。とにかくかしこい犬のネッドがこの作品の中でいい味になっています。1人じゃなくて2人だからこそできることが、いつだってたくさんあります。  

海賊船の財宝 (ハリネズミの本箱)

海賊船の財宝 (ハリネズミの本箱)

 呪いをかけられ年をとらないベンとネッド。彼らは海賊船に乗り込むことになる。執拗に追い掛けてくる船から逃れながら、なんとか故郷に帰ろうとする海賊船の船長だったが。
 面白かったです。こういう夢中になって読める作品がもっといろいろ見つけられるといいなと思います。海賊船の財宝は2部構成。前半は海賊船での攻防。そして後半は雪山での攻防。海と雪山。これが関係ないように見えて最後にはばちっと流れが見えるところが良いですね。今回も素敵なのは犬のネッド。とにかく賢くて皮肉もたっぷりで素敵です。ベンはとてもまっすぐな少年できちんと人の想いを受けとめることのできる人です。海賊にしてもそれからできた仲間にしても、とてもいい方ばかりでそんな人々に巡り合うことができて、友達となれるところがベンの才能ですね。誰かのために一生懸命になる。そんな仲間だからこそ、冒険も楽しいものになっていきます。でも、この作品はハッピーエンドでもちょっとした淋しさは残ります。ずっと素敵な仲間と一緒にいることができない。そんな運命だから、ベンの流した涙の分、切ないです。そして、今度はどんなところでどんな出逢いが待っているんでしょう。