白い巨塔。 

 「白い巨塔」見終わりました。なんだかんだで1週間くらいの間に全話、見てしまったことになります。ラスト2回はもう、涙、涙、涙でした。最終回なんてどのシーン見ても涙が出て、1時間30分くらいずっと泣き通しでした。あまりに泣きすぎて、次の日の朝、目がかなり腫れぼったかったです。「何があったの?」と聞かれてもさすがに、「白い巨塔、見て泣きまくってました」とは言えず、お茶を濁しておきました…。
 最初にほろり。と来たのは、財前が東教授に執刀医をお願いするところ。なにとはなしにほろり。と来てしまって。なんだかんだ、いろいろ権力争いでぐちゃぐちゃしていたけど、東教授と財前、本当はもっと分かり合えるところも通じ合うところもあったんだなって思えたのです。そしてどんなに財前が東教授を信頼していたか、そして東教授も財前に目をかけていたか、それがやっと目に見えてわかるようになった。こういうカタチでしか素直になれない2人なんだけど、最後の最後でお2人の信頼関係を見たような気がしました。そして、里見と財前の関係にも泣かされました。最後の言葉なんて、聞いてて胸がぎゅっとなって、泣かずにはいられませんでした。財前にとって里見という存在がどれほど大きかったか、そして財前が道を大きく反れ始めたのは里見が側にいなかったからかもって思えました。どんな手を使っても勝てないライバル。考え方も生き方も違うけれど、どこか似ている2人。財前にとっての教授っていうのは、もしかすると自己顕示ではなくて、東教授と里見に認めてほしいという現れだけだったのかもしれないなぁと。単に、「おめでとう。」がほしかっただけかも。財前は本当はものすごく子供で、本当に誉めて欲しい人に素直に言えなくて、ひんまがっちゃっただけかもって考えるとすごくかわいい人なのかもって思えてきます。ケイ子にとっての財前はそういう感じなのかもしれない。
 最後まで教授として死を迎え、最後まで自分の医師としての人生を歩むことを止めなかった財前。それほどまでの信念で歩んできた道だから、どこが間違ってるとかそういうことではなくて、ただ、遣り方が異なっていただけなのかもしれません。ほんと全身全力、ある意味ものすごく不器用とも思えるほどに医師として上り詰めようとしてきたのだと思う。最後まで、自分の信念を貫き通した。それが彼の生きる道だったから。彼が築き上げようとした新しい「白い塔」の完成を待たずして、彼は逝ってしまったけれど、彼の残した言葉が、彼の残した指先がきっと、いろんな人の心に残って、新しい白い塔はきっと輝かしいものになるのだろう。彼もある意味、白い巨塔の犠牲者なのかもしれない。崇高とも言える信念を持っていたのに、それがあまりにも大きな組織だったがために、捩れて色を変えてしまった。人があまりにも大きなものを求めるとき、その心の現れは少し見た目が変わるのかもしれない。そして、大きいが故に自分の思わぬ方向に進んでいくのかもしれない。彼の心は変わってはいないのに。
 最後まで見て…、財前は、みんなに本当に愛されているとひしひしと感じました。こんなにもみんなに愛されている人はいないでしょう。そして、それに気付いたのが最後の最後だっただけ。人生には分かれ道はたくさんある。どちらを選んでも地獄かもしれない。それでも、歩かなきゃならない。自分の信じたものを自分の信じた人と伴に。どんなときも1番大切なのは、人と人との心。それが見えなくなってしまったときに白の巨塔に飲みこまれるのだろう。1人で歩いていると大きな欲望は見えないように襲ってきて、いつのまにか飲み込まれているから。だから、いつだって大切なのは、人を信じる心とその温もりなんだろう。