ダ・ヴィンチ・コード。

 公開初日に観てきました。注目が集まっているので、混雑しているかなと思ってましたが、意外に空いてました。私は原作未読なため、ストーリーの流れもまったく知らずに、映画を観ました。なので、そういう感想だと思ってください。以下、ネタバレ有りな感想につづく。
 日本人にはわかりにくい映画かもしれない。というのが最初の感想。キリスト教の成り立ちや教えを知っていて、そして教会というところがどんなところなのかを肌で感じている人でないとこのミステリーのミステリーたるところが感じにくい気がする。私のキリスト教に関する知識は世界史の授業で学んだことだけなので、ニケーア宗教会議についてもちらっと知っているだけだし、三位一体という三位がなんなのかも忘れているほど。どちらかというと小泉首相の「三位一体の改革」の方がわかるくらいだ。イエスは神なのか人なのか。それがこれまでの歴史の中で混乱を生じる原因になってきたということは学んだものの、『イエスの子孫が存在する』ということの大きさがわからない。それが教会に与える影響がどれほどのことなのか、そして信仰心にどう結びつくのかといったところが想像できないので、ミステリーとしての驚きが半減してしまった。たぶん、普段から教会に接し、その教えを持っている方にとっては衝撃的な事実なのだろうなと想像するくらい。
 マグダラのマリアがストーリーの中心となるわけですが、まずこのマリアについての知識が全くない私には『イエスの妻だった』という説を持ち出されても、『そうなの』と鵜呑みにしてしまうしかない。ほんとはここで『え〜?!』と驚かないといけないのだと思いますが、バックボーンのない私には判断が付かないし。そういう宗教的なところの知識が足りてなかったために、このミステリーの面白さの半分以上を逃した気がする。ちゃんとそういうところについての知識があれば、もっと楽しめたのだろうな。
 ダ・ヴィンチの絵画に隠された秘密という意味での「ダ・ヴィンチ・コード」というタイトルだったと思うのですが、そのあたりがわかりにくかった。絵画そのものの謎として出てきたのは「最後の晩餐」だけだったし、それもダヴィンチが仕込んだ暗号ということではなかった気がするんだけど? ルーブルの名画を廻るシーンもただ廻っているだけになっていたし、最初の艦長があそこまでして人体図に似せて死んでいった理由が全く理解できなかった。実際、謎解きの鍵になっていたのはダイイングメッセージだけだったし、裸になってまで何を伝えたかったのか、理由があるんだろうけどわからなかった。ラストのあたりのルーブルに戻ってくるシーンもはっとするものはあったんだけど、これまでがかなり歴史的に古い時代のものだっただけに、つい最近立てられたあのガラスのピラミッドに意味があったと言われても、ピンとこないような。偶然が重なっただけというような印象。謎解きの面白さがこのストーリーの核だったと思うのですが、そのあたりのどきどきするようなところがあまり味わえませんでした。
 この映画を見に行った理由の一つが「イアン・マッケラン」さんの出演だったのですが、イアンさんはかなりいい味を出しておられました。かなり素敵です。どんな役柄なのか知らなかったのですが、3番目に重要な役でした。セリフもかなり長かったし、おとぼけなところも、裏切りもいろんな側面からいい演技をされていました。イアンさんが出ておられたからこの映画は引き締まったんじゃないかと思います。謎解きのあたりも有無を言わせぬ感じがありましたし、重厚さが増した気がします。主演のお二人はもうちょっとラブロマンス的でもよかった気がするんだけど、そういうんじゃないんだよね。人間として生きるということをそういうところで見せてくれてもよかったのかなぁと思ったりしたんだけど。あそこまで重いと愛さえも意味が深すぎるか。
 このいろんな疑問に答えてくれる手段として、原作を読みたいという心境になりました。たぶん、私と同じ気持ちになる方は多いだろうから、本の売り上げは期待できると思います。文庫版を出して低価格でお求めやすくなっていますしね。原作を読んでから映画を観た方の感想も是非、拝見してみたいと思います。原作未読で映画だけだと、疑問点がかなり残る作品だったということは言えると思います。