世界選手権 女子フリー。
ショートのときは緊張なく見れていたのですが、なぜかフリーは応援している私がものすごく緊張してしまって、1つ1つのジャンプごとにほっとしているような状況でした。「鐘」の重厚な音楽が流れると会場の雰囲気が一変。すっと、浅田真央さんの演技に吸い込まれていくようでした。最初の3A。あまり鮮明な画質で見ていなかったので、回転が足りていたのかわからなくて、ちょっと低めなのかなぁと思いました。次の3A+2Tは私は綺麗に決まったように思いました。プロトコルを見たところ、最初の3Aは認定、次のコンビネーションは回転不足の上にマイナス評価…。
それからのジャンプはとても綺麗でした。オリンピックでオーバーターンになってしまった3F+2Lo+2Loも綺麗に決まりましたし、次の3Tも見事でした。ジャンプが全部成功したら、私もほっとして、それからのステップの気迫に涙が出てしまいました。本当にいろいろあった今シーズン。どんな努力をしてこの「鐘」というプログラムを自分のものにしたのだろうと思うと、それだけで涙。
タチアナコーチはこのプログラムに「乗り越えろ」という目標を与えたと聞いていますが、まさに「乗り越えろ」です。今シーズンだけでなくて、前のシーズンから真央さんはいろんなことにチャレンジしていました。フリーで3Aを2回いれること、ショートで3Aを入れること。回転不足にいつも悩まされて、本当に美しい演技なのに、なかなか点数に反映されなくて、それでも、チャレンジする心をまっすぐにもって滑っておられました。オリンピック後にまたこの世界選手権に向けて、自分を奮い立たせることも本当に難しいことだったと思います。そんな中でのこの演技。もう、本当にパーフェクトです。ジャッジの感じ方とは違うのかもしれませんが、私から見たらショートもフリーもパーフェクトでした。真央さんが目標にしていた滑りはこれだったんだと、私にはそれが伝わってきました。
演技後の真央さんは笑顔でした。弾けるような笑顔ではなかったけれど、でも笑顔だった。だから、本当によかった。
ショートでミスが出た安藤美姫さんのクレオパトラもノーミスで、今季最高の演技だったと思います。安藤さんが見せたかった世界が描き出されていました。エキゾチックですこし色っぽくて、弾けるような躍動感がある。素晴らしい演技でした。そして、鈴木明子さんの演技。ショート後は涙だったので、気持ちの切り替えができるかと思っていましたが、「ウエストサイドストーリー」に乗せて、ラストではいつものスマイル。あの笑顔をみてほっとしました。ステップの気持ちよさは抜群でした。第一グループで滑っていたために、スケーティングスキルが秀でていることがわかりました。
長洲未来さんは点数がでて「がくっ」と首をうなだれてしまったのが、すべての感情を表しているようでした。やっぱり緊張してしまったのかもしれないいですね。ミスもありましたが、2A+3Tはとても高さがあって綺麗だったし、スピンやスパイラルは本当に世界最高レベルです。
ショートもフリーも私が思っている感覚とは全く違うふうに点数が出てくるので、キス&クライで点数を見るまで誰が何位になるのかまったくわかりませんでした。演技と点数はベツモノというような感覚でした。ノーミスだからといってもいい点数がでるというわけでもなく、ミスをしてもいい点数が出ることもあり…、観客と点数に大きな川が流れているような雰囲気になってしまったことを本当に残念に思います。点数が表示されて、わぁっと盛り上がるようなそんな観客とスケーターとの空間であってほしかった。選手のみなさんの演技が素晴らしかったので、本当に淋しく思ってしまいました。