ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品 その2。

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品紹介を引き続き。ハウルの後、翻訳ラッシュがあったため、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品はほとんどが日本語訳されているようです。なるべく原書出版順に紹介します。

ウィルキンズの歯と呪いの魔法 (ハリネズミの本箱)

ウィルキンズの歯と呪いの魔法 (ハリネズミの本箱)

 おこづかいがなくなったので、「仕返し有限会社」を設立した姉と弟。いろんな依頼がごちゃごちゃからまりながら、最後にはまるくおさまるジョーンズワールドの初期版です。見た目も怪しい魔女のビディとやりあう子供たちのどたばた加減が面白い。特に絵を描いている部屋をあら探ししたり、屋根をこわしちゃったり、やることが全部めちゃめちゃ。こんなことで、上手くいくのかなと思うのですが、最後には「長靴を履いたネコ」作戦がばっちり決まって、魔女を退治してしまいます。仲違いしていた子供たちがこれを機にみんな仲良くなってしまうのもいい感じ。
うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)

うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)

 再婚したことによって、両方の連れ子同士がひとつの家で暮らすことになった。新しいお父さんは横暴でとにかくイヤなヤツ。しかもその連れ子とも険悪ムード。そんなときにそのお父さんがくれた化学実験セットが大騒動を巻き起こすことに。
 この化学実験セットがとにかく魅力的。透明になれちゃったり、空を飛べたり、使い方次第でなんでもできるんじゃないかって、わくわくしてしまうとんでもないセットなのだ。私もこれとこれを混ぜて…なんて想像してしまったくらい。このとんでもないセットのために、うちの中はとんでもないものが動き回ったり、窮地に陥ることも。そんな混乱の中で、いがみ合っていた子供たちが少しづつ、距離を縮めていき、そして最後には「鬼」と呼ばれていたお父さんとも理解しあえるようになるというストーリー。ちょっとしたことで人と人というのは、思いが通じ合えなかったりするものなのです。ラストがハッピーエンドだし、とにかく楽しい実験セットなので、「面白かった!」と一言言い切れるお勧めの一冊です。
星空から来た犬 (ハリネズミの本箱)

星空から来た犬 (ハリネズミの本箱)

 星人であるシリウスは殺人の罪によって、犬に変えられ地球に送り込まれた。「ゾイ」を探し出せば、元の姿に戻ることができるという。犬のシリウスは少しづつ大きくなり、「ゾイ」を探し始める。
 初期の作品ということもあり、ジョーンズワールドともいうべき派手ではちゃめちゃな世界ではないのですが、それでも設定が面白く、するすると最後まで読んでしまいます。シリウスが星人として人として描かれているのも面白いですし、それが犬になってしまうというのもすごい。この犬の描写がとても巧みでほんとに生き生きと描かれているので、自分が犬になったようなそんな感覚を覚えます。成長していくにつれ、できることも多くなるし、人間の関係のゴタゴタも見えてくる。それが犬の視点から描かれているからこそ、素直に受け止められます。そしてラストはちょっと切ない。宇宙を動かすようなチカラをもっていても、結局、最後の最後でシリウスの願いは叶えられなかった。犬だったからこそ通じ合えて、分かち合えたやさしさやぬくもりやふれあいがある。シリウスにはそれがかけがえのない大切なものだったに違いないのです。怒りっぽかったシリウスが本当に大切なものに目覚めるそんなストーリーです。
ぼくとルークの一週間と一日 (創元ブックランド)

ぼくとルークの一週間と一日 (創元ブックランド)

 両親が亡くなって、ひきとられた大おじの一家と暮らす休暇が苦痛でたまらないデイヴィッドは、ある日、呪いの言葉をつぶやく。それが偶然にもルークという不思議な少年を牢獄から解放することになってしまった。
 偶然ってとんでもないことをすることもあるのかも。最後の最後までルークが誰なのか、そしてルークを追いかけて次々に現れる人物が誰なのかわからない展開でした。前半の家の中でのやりとりは息が詰まるような話が多かったのですが、ルークが現れてからはドタバタ。そして、ラストに全部がわかります。日本人にはなじみのない神様のお話が下敷きにされていることは、最後のあとがきをみるまではわかりませんでした。これがわかっているともっとお話が楽しめたのに!と思ったときには、時遅し。