見えざるピラミッド。

 私が新刊が出たときには必ず読むことにしている作家さんの一人、ラルフ・イーザウさんの新刊。佐竹美保さんのイラストも毎回楽しみです。

見えざるピラミッド〈上〉―赤き紋章の伝説

見えざるピラミッド〈上〉―赤き紋章の伝説

見えざるピラミッド〈下〉―赤き紋章の伝説

見えざるピラミッド〈下〉―赤き紋章の伝説

 上のアマゾンの紹介だと(3)となっていますが、上下巻の2冊で完結します。非常にイーザウさんらしい作品になっています。3つの世界の『均衡の守り手』である少年3人が、それぞれに困難に立ち向かい、最後には3人が心を結び合って、世界を守るというストーリー。と書いてしまうとすごくファンタジーらしいのですが、イーザウさんの作品だけあって、世界各地にあるピラミッドの伝説や残されている文書などを複雑に絡ませているので、読み応えがあります。『暁の円卓』がちょっと読みづらいのと同じ感覚。3人の主人公のストーリーが別々に進行していくパターンは私はちょっと苦手なので、最初はトレヴィル中心に読んでいきました。トレヴィルが一番自分が生き抜くためにがんばっていたので、感情移入しやすかったのです。中盤はトプラのお話が面白い。古代エジプトと近未来を混ぜたような世界なので、なんでもありだし、なんといっても好きな人のためにがんばっているのがいいです。それに比べると地球のフランシスコのお話はちょっと普通だったかなぁと思ってしまいます。ちょっと難しい話も混じってましたしね。ひとつ、ニヤリとさせられるのは、他のシリーズの主人公であるデービットが出てくること。うれしい特別出演です。上巻は読むのに時間がかかりましたが、下巻はストーリーも盛り上がるので早く読めました。

 もう一つ上下巻の作品を紹介。

パーラ〈上〉沈黙の町

パーラ〈上〉沈黙の町

パーラ〈下〉古城の秘密

パーラ〈下〉古城の秘密

 さらりと読めます。上下巻なのですが、一ページの文字数が少ないのでページ数の割りには重たい印象ではありません。毎回の章の前に詩が付いています。その言葉の中にこれからの展開が少しづつ隠されていました。でも直接関係する部分が少なかったのが残念だったかなぁ。エミリー・ロッダ風なテイストなのかと思っていたのです。お城の庭を冒険していくシーンの描写がいいです。イーザウさんの描写を読んでいるとこの世にいない「コトバガリ」や「モグモグ」がまるでそこにいる生き物のように感じられるからとても不思議です。人々が言葉を失うことによってなくしたのは、言葉そのものだけでなく、気持ちとか生きる気力だったのだと思います。言葉って気持ちを伝える一番直接的な手段ですからね。安易な情報の氾濫に流されず、自分自身の言葉を大切にしていきたいです。