◆陰影ある揺らぎ。

海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚)

海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選 (大人の本棚)

 久しぶりに漢和辞典を駆使して読みました。読めない漢字多数。私の日本語能力の乏しさにうちひしがれつつも、漢和辞典を駆使してまでも読み進めたくなる短編集でした。表題作の「海の上の少女」はとても幻想的なお話なのですが、ラストを読むとどこか悲しく、行き場のない感情が揺らぎます。他にもノアの箱船や古代ギリシャの神々のお話など、どの作品も美しく幻想的でありながらも、どこかひやりとする現実感を孕んでいます。場面や人物はくっきりと浮き立って、清涼感のある文章が続いていきます。現実よりもどこかふわっとした印象を受けますし、実際、神話等のお話が多いのですが、でも、そこには現実よりもはっきりとした現実が描き出されているようにも思います。はっとする言葉が随所に散りばめられている素晴らしい言葉の世界です。
 この本を手にとるきっかけとなったのは、ときどき覗かせて頂いているblogで紹介されていたからでした。blogに書かれていたこの本へのお話がとても面白く、興味深かったので、手にとってみることにしました。それまでシュペルヴィエルという作家の名前すらも聞いたことがなかったのですが、この本に出逢えたことは本当にうれしい出逢いでした。
 本を紹介されているblogは数多くあると思うのですが、それをメインに書かれているblogより普段の生活の中にひょこっと紹介されている本の方が目に付きやすいですし、興味もわきます。実際、当たりの本が多いんです。他のいろんな話題がある中で、その本のことを書こうと思わせるだけの魅力がその本にはあったということなのでしょうか。それに飾らない言葉で感想や感じられたことが書き添えてあることも好感度を上げていきます。本を紹介しようとすると堅苦しくなったり、逆に曖昧に書いてしまいがちなので、感じたままに素直に言葉に出していけたらと思っています。その方がきっと他の方にもその本の魅力が伝わるかもしれないですね。