ALWAYS 三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日 通常版 [DVD]

ALWAYS 三丁目の夕日 通常版 [DVD]

話題作だったので借りて見ました。どんな映画なのか、ちっとも知らずに見て、ぼろぼろ、泣いてました。ストーリーとしても奇をてらうことなく、ごくごくシンプルに作られていたのですが、なぜかその素朴さに号泣。飾り立てられた今の時代の中では、このくらいのストレートさが逆に新鮮だ。
 人があったかいね。他人と他人なのに家族のように一緒にいて、一緒にご飯食べて、一緒に笑ったり泣いたりしてる。いまじゃ絶対あり得ない。人と人との間の垣根はとても低くて、プライバシーがないっていえばそうなんだろうけど、繋がってる気がする。勝手に人の家に入ってご飯作っててても、笑って喜んでくれたり、もめごとでさえも痴話げんかのように思える緊密ぶりだ。東京にこんな時代があったというのがびっくり。
 今の東京はたくさんの人がいても、むしろいればいるほどに『ひとり』だということを感じる街になっている。自分という空間と時間を綺麗に磨き上げ、誰も入ってこれない垣根を巡らせている。そのくせ、あまりに人恋しくて、匿名の波の中に飛び込んだりしてる。そんな東京にもこんなあたたかな世界が広がっていたときがあったんだ。テレビが来ることがお祭り騒ぎで、みんなで一つのことに夢中になって、バカ騒ぎしてる。それが今のクールな東京よりもずっと羨ましく見えたりした。野暮ったいっていえば野暮ったいけどさ、あの夕日の色は他には出せないでしょ。あれって、絶対、家族のあたたかさの色だもんね。
 空が四角くなくて、ツンととがった東京タワーが誇らしげで、まっすぐに夕日を見れる世界。私にはこの時代に対するノスタルジーはないから、逆に未来と同じように見えてしまう。こういう時間もいいなって。この時代を懐かしく思える人にとっては、かけがえのない青春や情感を覚えるものなんだろうけど、私にとってはこの世界も未来への選択肢の一つ。こんな平衡宇宙もあっていいんじゃないか。可能性の一つとして。
 登場人物の中では堀北真希ちゃんがすごい好き。青森なまりなのもかわいくて、結構言うこと言って、でも淋しさも抱えてたりする。赤いほっぺもかわいい。堀北さんは女優として伸びていくなぁと感じる。芯から強いし、存在感あるよね。主演の吉岡さんの演技はこれまでそんなに好きでもなかったんだけど、この役柄は素直によかったと思えた。実力ってものなのかな。万年筆やからっぽの指輪の箱。彼が持ち出すとほんと精一杯宝物だと思えて、泣ける。素直にいい映画だった。