SHOCK観劇後編。 

 今日もSHOCK観劇感想の続きです。さらりと書こうと思っているのですが、ついつい長くなってしまうのは、それだけ思うものが多い舞台だからなんですよね。
 最後のステージ。真っ赤な幕の中でナオキのドラムが響く。バチだけであんなに緊迫した世界を創り上げていくことはすごいことだと思う。そして、コウイチのフライング。2階からだとフライングが多少みづらいのだけど、この赤い布を持って飛んでいるコウイチのフライングはSHOCKの名物と言ってもいいくらいのシーンだと思う。ほんと、飛んでくるときに見ているとコウイチのどこもかしこもとっても細いの。びっくりする。今年のナオキとコウイチのドラム対決は去年に比べて視覚的にも面白いものになっていた。ドラムの譜面的にもレベルアップしているらしいけど、そのあたりは素人にはわからない部分もあるのだけど、ドラムや太鼓が円形に並べてあって、次はどれを叩くのかなと予想しながら見ていくのが楽しい。ナオキとバチを合わせて音を作り出しているところが特に好きなシーン。あれって難しいと思うんだけど、見ていても音としても楽しい部分だから好き。
 はい、そして2階のみなさんのハイライト(?)のフライングです! なぜか梯子が出てくると消防の出初め式を想い出してしまうんだけど、この部分はもう瞬きするのも惜しいくらいに目を見開いて見ていました。タイミングを合わせて飛んでいるその息づかいや、腕に伝わる緊張感までが客席にひしひしと伝わってくるのです。やっぱりこのシーンはどきどきする。そして最後に2階の客席に近づくようにフライング。このときのコウイチを見て、無条件にかっこいいと思った。その真剣な眼差しもなにもかも、かっこいいと思った。今年もこんなに間近でコウイチを見れてほんと、すごいよ。私。私は待ち受けるようにして見ていたけど、「わぁ」とも「きゃあ」とも付かない短い悲鳴が聞こえたりもするシーンでした。下から見ておられる方にはどんなふうに見えているんだろう。次はリョウとナオキのシーン。ナオキの出番は去年とは格段に増えていて、龍にも乗っておられました。リョウの立ち振る舞いも堂々としてます。マスク。ここもいつも楽しみにしているのです。衣装とマスクが変わるだけで一変していく表情がとても面白い。
 そして「夜の海」。このシーンは去年と比べてものすごく素敵になったシーン。この曲がこんなに大切でこんなに優しくてこんなに染み入るものだって知らなかった。それくらいこのシーンが素敵すぎるのです。今年のSHOCKで一番好きなシーンをあげるとしたらこのシーン。曲の間にリョウとリカのセリフが入るのですが、この効果がとても大きかった。そのセリフがあるからこそ、また曲に深みが増して、そしてこの舞台全部を包むシーンになっていると思います。ここにセリフを入れたことで、この舞台のメッセージ性は増したんじゃないかなぁと思うのです。それも押しつけがましくではなく自然に入ってくる言葉として受け取れました。だからこそ、こんなにもその言葉が胸に染み入るのでしょう。このシーンを見た後では、サントラでどの曲が好きかって聞かれたら「夜の海」って答えるしかないでしょう!って言い切れるくらいになっていると思います。言い過ぎじゃなくて、ほんとにね。このシーンは音と言葉とその余韻に浸っていたいです。
 そして、儚げな桜の下。明るい光の中。みんなに残した気持ちが続いていく。そうやって走り続けていく。今年も見所しかないくらいぎゅっと詰まった舞台でした。カーテンコールでは拍手が鳴りやまなかったです。
 今年もいっぱい感動してしまった。しかも去年と違った気持ちで感動してた。主題としては同じだった気もしているけど、私の中では何か受け取り方が違っていて、どちらかというと自分に顧みて何ができるだろう?って自分に問いかけるものになっていた。SHOCKが始まる前に更新された堂本光一さんの日記の中の言葉。それがずっと響いている。「どうして走るのか」 それがこの舞台を観ている途中も終わってからも頭から離れない。そう、「どうして走るのか」 きっと、明確に答えはでない。挨拶で光一さんも言っておられたけど、そういうものだと思う。きっとその答えは一つではないし、様々に変化していくものだからだろう。コウイチがカンパニーに見せていた走る背中。リョウが自分を表現するためにやってやろうと見せた拳。リカの見せた涙。そしてアキヤマを始めとするカンパニーのみんなの目指すところ。走り続けることが目的になることだってある。ひとりじゃないから走れることもある。目指している先が見えなくてもそれでも今を懸命に生きている。それがきっと生きてるってことなんだろう。そんなに先の未来なんて見通せない。全部決まったレールの上を走るのではつまらない。どんなふうにも、どんな場所へもいけるそんな自由さを持ったまま、それでも走り続ける。それがとても魅力的に思える。
 光一さんがよく雑誌のインタビューで『これからの目標は?』と聞かれて答えておられる答えと同じだと気が付いた。私にはそんな大きな空間が見えてなかった。目先の目標を誇らしげに掲げていた。でも、「どうして走るのか」と聞かれたときに、その目先の目標はその答えにはなり得ない。走る理由なんてわたしにはないからだ。気が付いたら走ってた。行き先もわからないのに、それでも走ってた。がんばってた。そういうものかもしれない。だから、この光一さんの問いに容易に答えられないことを私は今はうれしく思っている。まだまだ未来は広いということだから。その答えを探しにいく場所がいくつもあるということだから。そう気が付いたときに、胸の中があったかくなった。そんな気持ちを今年のSHOCKがくれた。閉塞しがちな毎日がいきなり明るく開けた感じ。そんなふうに目を開かせてくれた。
 翼さんのケガはとても残念なニュースだったけれど、錦戸亮さんが本当にいい演技を見せてくださってSHOCKはこんなに素敵な舞台になっている。去年観劇したときは、どんな感じなんだろう?って見ていた錦戸さんの演技が、今年は楽しみでならなかった。そしてその期待以上のものが舞台上で見れた。カーテンコールの錦戸さんもかっこよかったし、やっぱり生の錦戸さんが見れるっていいね。コウイチのライバルという役どころは難しいけれど、だけど錦戸さんは本当にライバルだったよ。すごく素敵でした! 来年の再演が決定しました。新作もものすっごく楽しみなんだけど、来年の再演もとても楽しみ。帝国劇場の女神が微笑んでくれるなら、もちろん来年もここに来ます。いつも新しい感情をくれるそんな舞台にまた逢いたいから。千秋楽までがんばってください。そしてこれから観にいかれる方、いろんな気持ちを味わってください。