2046。

2046 [DVD]

2046 [DVD]

 
 「2046」を見てきました。すっごく朝早い上映に行ったので、映画館貸し切りでしたー(笑)他の方がいるときは身じろぎするのもご迷惑になるかなぁと思って、ぴしっと座ってみているのですが、今回はかなり自由に見せて頂きました。それにしても、公開から1週間なのに、このゆったり具合はどうなんだ(笑)ネタバレを含む感想は下へ続きます。
 「ストーリーが難解でいまいち意味がわからない」という感想をお友達のサイトで見かけていたのですが、私にはそれほどまでに難解だとは感じられませんでした。あとは、木村拓哉さんの出演時間が短いというお話もありましたが、あの存在感と随所に散りばめられていたために、かなり長い時間出演されていたように思いました。(公開版はカンヌ版とは違うというお話ですしね) ストーリー概略…。トニー・レオン扮する主人公の男は、過去の恋を引きづりながら、次々に女性と恋愛をしていくが、結局、自分の心は過去に捕らわれたまま、ハッピーエンドは見つけられなかった…。アンドロイドとか近未来が宣伝としては、前に出ていたように思いますが、近未来の出来事は彼の心の投影でしかなくて、現実の男女の素直になりきれない恋愛が、この映画のすべてだと思います。
 彼の小説の中の彼は現実の世界よりも、素直に彼の心を曝け出しています。熱情に浮かされて、刹那的な恋愛に溺れても、最後の最後で答えをくれない。「僕と一緒にいかないか。」何度も繰り返されるこの言葉への答えは、いつも決まって否定を示している。彼の心も彼女の心も何時間経っても、過去の誰かの束縛からは解かれていない。「本当に愛しているのか」という疑問だけが、彼と彼女の心を束縛し、そしてその疑問を抱えたまま生きていき、そして、いつまでもその疑問の答えだけを探している。そして、その過去の恋を木の中に閉じ込めた彼と彼女は、その秘密を他の誰にも話すことなく、そして、決して、誰も心の中に入れようとはしない。そして、悲しいくらいに心と心はすれ違い続ける。果てない旅を続ける列車はどこに向かっているわけでもない。ただ、彼の心の中をさまよい続けているだけなのだ。過去に残した答えをただ探し求めて。恋愛にタイミングは重要だろう。違ったタイミングで出遭えば、違う未来が待っている。でも、すれ違ってしまった心は取り戻すことはできない。
 映像がすごく綺麗で、カット割りも目を惹くものがありました。香港という夜の闇に光るネオンのように幻想的で、触れると消えてしまいそうな雰囲気を持っています。随所に流れてくるオペラも効果的だと思いました。私が印象に残っているシーンを挙げてみます。
1 フェイ・ウォンのたどたどしい日本語。
 「いきます」を活用したようなたどたどしい日本語と、鳴り響く靴音。この映画の最後の最後まで、彼女のこのセリフがずっと頭に残って消えませんでした。ひとり言だからこその彼女のほんとの心が全部見えるセリフ。
2 アンドロイドの靴
 フェイ・ウォンのアンドロイド姿は衣装も素敵。特に靴。靴底が歩くと光るようになっていて、それがとっても素敵でした。
3 チャン・ツィイーの涙
 チャン・ツィイーは私が思っていたより出番多かったです。それに1番、彼女の恋心が切なかったよ。ものすっごい美人でものすっごいスタイル良くて、わたしもふらふらになってしまいそう(笑)恋の始めに見せる小悪魔的なところも、ものすごく艶かしく揺れる姿も、嫉妬を見せる姿も、最後まで忘れきれない恋を求める姿も、とにかく切なかった。恋の始めに見せていた、無邪気でかわいいところまでは、いままでの映画でも見ていたチャンツィイーの素敵なところだったのですが、今回は涙のシーンが印象深いです。追いすがってでも手に入れたいのに、どうしてもプライドを捨てられない。本気になってしまった彼女、でも、気高さは捨てない。そんな彼女の涙が忘れられません。武侠モノでない彼女はひさびさでした。
4 木村拓哉
 オープニングが日本語のナレーションなのですが、随所に木村さん節の台詞回しが聞けました。普通にいつもの木村さんだなぁと感じられたところがよかった。それに、とにかくかっこいいんですよ。大画面でアップにしても何をしててもかっこいい。アンドロイドとじゃれあうところも、切なげなところもかっこよかった。
 上映時間はちょっと長めに感じられました。かなりプツプツと途切れる感じがラストのあたりはしました。俳優の方の素敵なところと画面の綺麗さで満足できる映画でしたー。この映画がSFじゃなくて、恋愛ストーリーなのは確かです。でないと、話もわからなくなる気はします。