◆流されているようで、したたかに。

 どんな作品なのか、まったくの事前知識なしで見始めて、終わった後でなにか言葉にしようとすると、変質してしまいそうな、そんな想いになった。ぼんやりと生きているようで、しっかりと自分の気持ちを持ち、激動の時代の中で笑顔を保って生きている。きっと、そんなふうに「普通」に見える生き方が一番強いのだと思えた。小さなものに喜びを見出し、悲しくもなり、心が張り裂けそうなときもある。だけど、おなかもすくし、光はともるし、誰かを大切に思える。
 のんさんの声が本当にこの作品にとても合っていて、この声じゃなければ、この雰囲気は出せなかったなぁと本当に思った。畑のすみで空に向かって咲く、一つの黄色いたんぽぽのように、みんなに顧みられるわけじゃなくても、誰かの笑顔のもとになれればいい。