◆座右の銘。

 いまどき珍しいのかもしれないのだが、私には座右の銘がある。
 中学生のときは藤本ひとみ先生の「ばら物語」にいたく傾倒して、『夢は望めば叶う』が座右の銘だった。
 しかし、高校生の頃には『人の数だけ真実がある』が座右の銘になっていた。わたしなりのこの言葉の解釈は、人それぞれに考え方が違い、同じものをみても感じ方が違う。そのどれもが正解であって、不正解などない。だから、自分の思ったことを人に押し付けることなく、他人は他人だと尊重しなければならない、ということだった。
 他人の気持ちを推しはかることが苦手で、いつも自分視点だった私は人間関係さえも苦手にしていた。だからこそ、この言葉を戒めとして持っていたかったのだ。そして、それは大人になればなるほど大切なことだとわかる。だから、いまでも、座右の銘はこの言葉だ。
 それ以外に大切にしている言葉は、「1円を嗤うものは1円に泣く」と「一人はみんなのために、みんなは一人のために」である。人間の根幹は子供のころから変わらないものだなと、この年になって思う。