桐島、部活やめるってよ。

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]

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 神木隆之介さんの主演映画。映画の撮り方として群像になっているので、主演といっても主演らしくないような気もするんだけど、終わってからゆっくり考えるとやっぱり主演は神木くんだったと思えるから不思議。ヘタレ高校生の役なのですが、メガネをかけているというその風貌よりも、むしろ行動がヘタレだった。それがあまりに自然だから、そういう男の子いるいる…という既視感があって、それが演技だというのだから、さすがとしか言いようがない。
 教室の中でもいるようないないような扱いにされているけれど、映画のためならなんとか吹奏楽部の女の子には交渉することができる。映画館で偶然あった女の子には、いまいちな会話しかできないけれど、それでも淡い気持ちを抱いている。そんな何気ない視線や行動のひとつひとつが「前田」という人物をリアルにしているように思えた。神木くん以外の人物もほんとうに自然で、会話が台詞じゃないみたいに続いていくから、本当に高校の教室に迷い込んだようなそんな気がしていた。
 「桐島」は最後まできちんと現れない。現れないからこそ、どんなヤツなんだろう。こんなに廻りを動かすなんて、それほどのものなんだろうかと好奇心を掻き立てられる。そして、ここまで大きな期待を寄せられている「桐島」に同情もする。彼が部活をやめたのは、自分を取り戻したかったからじゃないかと思うな。きっと、廻りに動かされてばかりいる自分が何者かわからなくなってしまったのかもしれない。アイドルが自分を見失うようなそんな感じじゃないだろうか。
 同じ時間でも誰がみているかによって、切り取り方は変わってくる。一つの会話の大きく聞こえる部分が違う。そんなふうにみんな生きているんだ。なにかと戦いながら。