◆展覧会の絵。

 NHKで放送された「世界に響け 僕の音色〜ピアニスト・辻井伸行21歳の挑戦」を見ました。組曲展覧会の絵」への挑戦。自分の中のイメージ、風景がしっかり固まらないうちはピアノの演奏もどんどん変わっていくし、気持ちも1つの方向には進まないものです。ピアノを弾くということが自分のすべてをさらけ出すことであり、そこにどんな想いを表現するかによって、すべてが変わってしまいます。ラストに流れた「キエフの大きな門」には拡がりと開放感と自由が感じられました。とても清々しい音。これが辻井さんが描いた世界なのだと、それが伝わってきました。
 「展覧会の絵」というと私が音源として持っているのはこれ。

ムソルグスキー:作品集

ムソルグスキー:作品集

 あまりにも有名なスビャトスラフ・リヒテルのソフィアリサイタルでのライブ演奏が収録されています。リヒテルの「展覧会の絵」は辻井さんの演奏とはまったく違います。同じ曲なのかもわからないくらいと言っても言い過ぎではない気がするくらいです。「プロムナード」はものすごくテンポが速い。さらっと通過してしまうくらい速い。ライブ録音なのでざわざわした雰囲気が気になってたまらない録音状況なのですが、後半はものすごい音量とあふれ出る音と色に彩られて圧倒されます。「キエフの大きな門」から私が感じたのは、煉瓦と土でできたとてもどっしりとした重さと響き渡る鐘の衝撃でした。イメージとしては赤茶色。そしてものすごく大きな何か。
 ピアニストが描く世界はこんなにも広くて色鮮やかで驚かされます。私の中の見えなかった世界も引き出してくれそう。