Endless SHOCK。

 1年ぶりに帝国劇場に行ってきました。植草さんが加わってからのSHOCKを見たことがなかったので、私にとっては劇的に変わっていたSHOCKでした。
以下ネタバレ有りです。
 劇場の照明が明るいうちから「夜の海」のオーケストラバージョンが流れ始めて、オーケストラピットに演奏している人々が。フリなのかなぁと思ったのだけど、どう見ても弾いているっぽい。全部が全部オケではなかったと思いますが、今回のSHOCKは両側にオケの人がいて弾いておられました。生音だったんですよね。特にバラードや静かな曲のときはそれがわかりました。まぁ、ものすごい勢いのドラムのときもわかったんですけど。
 いきなりきらびやかな階段から登場。なんだか宝塚のようです。シルエットだけ浮かび上がって静止している登場シーンが綺麗でした。ご挨拶ののち、植草さんのご案内。オーナーがとても落ち着いているので、雰囲気も違ってみえました。で、上空から登場。フライングしている時、どうしてあんなにきらきらしているんだろう。そしていつも足先に目が行ってしまいます。オフブロードウェイのショーはかなり短縮されていて、ぱぱっと終わる感じでした。楽屋での「Yes my dream」が本当にとても楽しそうなナンバーで、カンパニーの結束が見てとれます。すごく幸せそう。屋上のシーンは酔っぱらった植草オーナーとコウイチのシーンが追加されていました。意外に笑いが多いシーン。
 休日シーンもかなりダンスが変わっていて、Shall we dance?な女性ダンサーに囲まれるコウイチや、舞台のちょっと脇でマチダ、ヨネハナと戯れるシーンが好きでした。オンブロードウェイのショー。オーナーとリカのタップコーナー。ものすごい勢いで平手打ちするリカ。あまりにリズミカル。そして植草さんのタップの実力の確かさを感じました。そのままコウイチに促されて退場。そういうつなぎでいいのか…。スペインのシーンは新しいものになっていました。黒のスーツと赤い手袋がすごく印象的です。光と影や白と黒に描き出されて、ものすごくスタイリッシュになっています。ダンサーさんの人数もすごいので圧巻。ピストルを打つシーンで暗転。
 明かりが付いたら楽屋シーン。このあたりは私が思っているよりもコウイチが人間になっているなぁと一番感じたシーン。怒りをぶつけたり、発言が完全に駄々っ子になっていたりして、最初にSHOCKを見たときに感じた「完璧なコウイチ」という姿ではなくて「人間のコウイチ」になっているなぁと思ったりしました。コウイチのいうことは全部正しくて…というわけではなくて、彼も人間で迷ったり自信をなくしたりしながらも、とにかく前をみて走り続けることを選択したということなんだと思ったのです。オーナーがいうセリフも効いていたのかもしれませんが、コウイチの若さというか、がむしゃらさみたいなものを感じたのは初めてでした。まだ包容するチカラは持っていなくて、背中を見せることでひっぱっていこうとする姿。それに私は「若さ」を感じてしまったんです。そう思えるのは私自身が年を重ねてしまったからかもしれませんが。諦めではなく前に行こうとするパワーもそうだし、ぶつかりあうこと自体に、まだ角がある、いいな、そういうふうにエネルギーを出して、生きていくこと、すごく羨ましいって。どれだけ、年とってしまったんだってくらいな感想が自分の中に沸き上がって、ちょっとびっくりでした。
 ジャパネスクのシーン。この前の楽屋のシーンに「ジャパネスクはハッピーエンド」というセリフがあって、それだけですごく深みが出た気がしました。そうか、事件が起こらなければ、ハッピーエンドだったのだと思うと、なおさらあのシーンの衝撃が増します。殺陣の間にセリフが入るようになり、そのことによってより深みが出ましたし、大将が1人づつ切り捨てていくシーンはぞくっとしました。毎年、毎年パワーアップしているのがすごいシーンです。ラストのシーンでマチダが刀を渡すのですが、そのあたりのマチダとリカのセリフが入っていることによって、劇的感が増しました。
 休憩。新幹線移動だったのもあって座りっぱなしだったので、帝国劇場の外に出て皇居の堀沿いにちょっとだけお散歩。リフレッシュしてみました。
 オーナーの墓堀りシーンから再開。なんだか不気味が話になってます。そのあとのシェークスピア劇にもオーナーが登場し、結局は夢オチなのですが、よりわかりやすく入れ込んであると感じでした。そのあとのオーナーとコウイチの歌うシーンが好きでした。植草さんの歌をしっかり聴いたことがなかったのですが、とても素敵な歌声でした。曲も好き。
 復活はお掃除用の台車で登場。F1のテーマを鼻歌で。そのあともリカに抱きつかれながら、F1エンジンの開発の歴史みたいなことをつぶやいていたのですが、さすがにそこまでの知識は私にはなかったです。ぎりぎりでやっているヤラが病院の窓を見ていたという設定が入ったことで、ヤラがコウイチを待っていたという感じが出て、また違ったふうに思えるようになりました。いままでは意地があるのだろうと思っていたのですが、それよりも「待っていた」感を出すことでカンパニーが途切れていないというふうに思えるようになり、その後のヤラの告白シーンや一緒にやろうと言い出すシーンが持つ印象も変わりました。リカは今回お父さんがいるという設定なので、それほどまでに追いつめられているという気がしませんでした。
 最後のショーは、太鼓のシーンがナオキとコウイチだけではなく、ヤラも入って3人でのシーンになっていました。ヤラが一緒にやりたいと言い出したショーなので、コウイチとヤラが伴に出演するシーンが増えたことはよりカンパニーとしての結束や、コウイチの想いが続いていくというテーマにも沿ったカタチになっていたと思います。ラダーフライングは今回も見上げて。2階に行った途端に消えてしまったコウイチが何をしているのか気になってたまりません。すごくお気に入りだったマスクのシーンが和傘をさしたままのフライングに変わっていて、ちょっとショックでした。なんとなくですが、傘のシーンを見ると紅白歌合戦の美川さんを思い起こしてしまいます。衣装もきらきらしているし、そのまま歌うんじゃないかって思うようなそんな雰囲気がありました。演出としてフライングが多めかなぁと。見た目にも華やかだし、ぱぱっと切り替わっていくのがすごく楽しみだったのでマスクの復活希望です。夜の海から大桜。なにもいうことがありません。いろいろな衣装がありましたが、ラストの白のひらひらが私は好きです。
 全体として植草オーナーが入ったことでバランスがよくなった気がしました。コウイチだけがカンパニーのすべてを背負っているわけではなく、リカも精神的よりしろがあり、人間らしさが出た気がします。会場から笑いが起こる回数もかなり増えた気がして、緊迫と緩和という意味でもバランスがよくなったかなぁって。もっと細かいところまで見たいと思うのですが、毎回、コウイチを追うだけで精一杯になってます。もっと舞台全体に行き渡ったものを感じられるようにしたいなぁと。とにかく今年は1年ぶりに観劇できただけで幸せでした。これからロングランになりますが、1公演1公演が素晴らしいものになりますように。