雲のむこう、約束の場所。

 某レンタルショップが100円で泣けるコーナーを特設していました。その中で気になったこの作品を借りてみました。新海誠監督のことは、これまでまったく存じ上げませんでしたが、本当に素敵な作品を創り出される方だと思います。まだ観ていないものが、もう1作あるようなので、それも観てみたくなりました。
 中学生の浩紀と拓也、そしてクラスメイトの佐由理。3人は国境を隔てたユニオンにそびえ立つ塔まで、自作の飛行機で行くことを約束する。しかし、佐由理が眠り続ける病に倒れてから、3人は別々の道を歩むことになる。そして、時が流れ、ユニオンとの開戦の日、佐由理を目覚めさせるために、約束を果たすために、飛行機は飛び立つ。
 とにかく綺麗な映像。ぽつり、ぽつりとつぶやくような言葉のひとつひとつは、まるで音楽か、水の音のようにも思えるくらい心地いい。特に飛行機を作っていた場所は、あまりにも綺麗すぎて、現実とは思えないような雰囲気。夕暮れや雨、吐息のひとつまで、光に彩られて夢の中にいるようだった。並行宇宙が存在するとしたら、それが本当に宇宙の観る夢のようなものだとしたら、どれが今の現実でどれが夢なのかわからなくなってしまうのではないかと思えた。中学時代の綺麗すぎて、ピュアすぎて、ずっと心の中にしまっておきたいくらいの約束が、すべての始まりになり、すべてを動かしていく。それは、あんなふうに美しい色をしているものなのかもしれない。心の中にある分、色は輝きは増していくものだろう。
 空の青。水の色。光のグラデーション。美しい風景がじんわりと沁みわたります。