獣の奏者3,4巻。

 獣の奏者(id:nanayana:20070707)の続編刊行! 驚きととともにうれしくて早速読みました。前作が2巻で完結していたため、続編はないだろうと思っていましたが、また前作とは違った味わいがありました。本当にとても大きなテーマを扱っていて、特に3巻は読み進めることが困難に思うほどでした。しかし、4巻はあっという間に読んでしまいました。ラストへ導かれるスピード感、迫力のある描写、圧巻のラスト。そして、心の中に残る重さ。読み応えのある作品でした。

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (3)探求編

 闘蛇村で起こった「牙」の大量死を調査していたエリンは、死んでいる牙がすべて雌であることに気が付く。そして、エリンの母が隠そうとしていた事実をエリンは解き明かそうとしていた。緑の瞳を持つ子孫に出会い、王獣と闘蛇の関係に疑問を持つ。母の残した記録、古文書の文書…、それが何を示すのかエリンは求めようとしていた。そんなときに、隣国ラーザが闘蛇の軍を持っていることがわかり、真王から王獣を軍として訓練することを託される。エリンは思い悩み、1人旅立つことを決意した。エリンの危機を救ったのは夫イアンだった。2人は別の道を模索した。
獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者 (4)完結編

 王獣を軍として育て上げるとともに、カザルムで生まれ育った王獣が繁殖しない理由を見いだしたエリン。夫は闘蛇乗りとして戦いに赴く決意をし、ジュシは母エリンが死の覚悟を決めていることにショックを受ける。とうとう戦いが始まり、狂乱の渦が…。
 中盤までエリンの夫が誰なのか明かされず、ちょっとどきどきしましたが、当然の人物でよかったです。ジュシが行動派なところはエリン譲り。エリンが自分の道を見いだしていく中で、ジュシも自分の道を自分で決めて歩き出しました。母としての強さや優しさが描かれていました。肉巻きのごはんがとてもおいしそう。
 ラストの戦いのシーンは圧巻。恐ろしい渦を巻いて、混乱と混沌がすべてを飲み尽くそうとするとき、エリンとリランは守る者のために急降下していきます。その姿を思い描くとぞくぞくします。凍り付いたように止まるすべて。中央にできた台風の目の中をものすごいスピードで降りていく影。1人と1頭がどんなに大きな力を持っていたとしても、大きな流れは止めようがなくて、だけど、2つの命をかけたその行為は、大きなものを後世に残しました。そうやって繋がっていくものがあること。1人の力は時間的にも体力的にも限られています。1人の力ではできないことが、連なって繋がって大きなモノを生み出すこと。それが、今になっているのであり、これからになっていくのだと思うのです。そういうことが、この作品の大きなテーマだったように思いました。