ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品 その5。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの作品をなるべく原書出版順に紹介。

魔空の森 ヘックスウッド

魔空の森 ヘックスウッド

 へんぴな農場に設置されていたバナスという装置が作動してしまったため、大慌てで止めにくるレイナーたち。そんな彼らも取り込んでどんどん時空は混乱していくばかり。少女アンがその森に入っていき、モーディオンに出逢い、ヒュームという新しい生命体を創り出す。
 最初に読んだときは半分くらいのところで挫折したお話。時間と空間がまたがっているお話なので、どこがどうなってこうなっているのか途中でわからなくなってしまったのでした。そして、途中でがらりと変わる展開。え?!あの人があの人で、この人がこの人でそうなってあーなっちゃっているわけ!と驚くこと間違いなしです。そして、それに気が付いた途端にもう一度最初の方を確認したくなります。すべてを支配しているはずのレイナーたちが次々にバナスのいいなりになっちゃってるところは読んでいても小気味いいのだけど、最後の最後でまさかヤムがすべてを握っていたなんてと気が付くと唖然。現実と虚構が入り乱れて展開するのでストーリーとしてはわかりにくいですし、登場人物を押さえるのも大変な一冊ですが、とてもジョーンズさんらしい作品です。


海駆ける騎士の伝説

海駆ける騎士の伝説

ジョーンズさんの初期の作品です。王道ファンタジーの世界が拡がっていて、面白かったです。特に恋がきっちり描かれているところは、この後の作品にはない部分かなと思いました。現代と騎士との世界が砂州で繋がっているというのもまた素敵な設定。気の強いセシリアがあっさりとラストに決断を下したところが私は好きです。迷いなく自分の道を選ぶという潔さ、それが彼女が生きていた時代では非常に難しいことだっただろうと思うからこそ、なおさら清々しく見えます。


 ジョーンズワールド全開の作品。魔法管理官マジドを選ぶために候補者たちを見守るルパード。候補者たちはどの人物もとんでもなく、しかも集まったホテルではファンタジー大会まで催されている。その上、コリフォニック帝国の継承者捜しまで重なって、すべてがすっちゃかめっちゃかに。
 一見ばかげたことをしているように見えるときほど意味があったり、偶然なんてなくって全部が必然で繋がっていたり、最後まで読んでみると意外に混乱していたことが嘘のようにすんなり通ってしまっています。このあたりがマジックの由縁。ちゃんと最後には驚きの展開も隠されていて、まさかその人物がそんなに大事な役回りだったのかと驚かされます。伏線なのか伏線じゃないのかわからないくらい、いろんな人の運命のベクトルが交差して、それがこのファンタジー大会に結集してしまいました。マリーとルパードはこのあと結婚することになったのかどうだか、ほんのり恋のはじまりかなと思うところで終わっているので、気になります。上巻までは読むのも大変なくらいの混乱ぶりでしたが、下巻を読むと面白かったと思える作品です。


花の魔法、白のドラゴン

花の魔法、白のドラゴン

 王様が国中を巡る旅に出る国、ブレスト。マーリンと呼ばれる予言者は国中の魔法使いのトップだが、彼がどうも国を危うくする陰謀を企んでいるらしい。ロディとニックはそれを阻止しようと奮闘する。
 面白かったです!ジョーンズワールドが十分に堪能できる作品で、しかも、ラストにこの陰謀の首謀者がわかるのですが、そんな繋がりになっていたのか…と思えるくらいいろんなところと繋がっています。ロディとニックとの関係も面白い。続編があったら、この2人の関係が発展したカタチになってくれるとうれしいです。クレストマンシーに繋がるような設定かなと思いました。クレストマンシーになってもおかしくないほどの魔力を持った人が出てきますが、彼は彼なりの生き方を見つけたみたいですね。世の中はほんといろんなことが繋がってできているものです。ほんの些細な出来事がこんなに大きな出来事までに発展してしまう。でも、それは誰が悪いというわけでもないのです。この世界に生きている限り、なにかしらの影響を与え続けているということなのですから。全部を見通して行動することはできないし、そんなのつまらない。先のわかからないストーリーだからこそ、そのときそのとき、自分の大切と思うことだけがんばるしかないってことですよね。ジョーンズ作品の登場人物たちは自分のためにがんばってます。世の中のためというよりは自分のためです。だからこそ、ほんとにがんばれるのだと思います。そして、最後にはハッピーエンドが待っています。