ザ・ロープメイカー 伝説を継ぐ者。

 1冊読み切りのもので面白い児童書にこのごろ出会っていなかったのですが、久々にどきどきするような作品を見つけました。いつも児童書は書評を見たり、本屋さんの話題の図書コーナーを参考にして選んでいるのですが、この本に関しては図書館でその背表紙に惹きつけられました。特に装丁が変わっている本ではないのですが、そのタイトルを見て、手に取って内側の紹介文を読んだら、もうこれは絶対面白いに違いないと思ったのです。そういうふうにして出逢える本でこんなに面白いものが見付かるって、やっぱり図書館は宝箱です。

ザ・ロープメイカー―伝説を継ぐ者 (ポプラ・ウイング・ブックス)

ザ・ロープメイカー―伝説を継ぐ者 (ポプラ・ウイング・ブックス)

 主人公のティルヤには森の声が聞こえない。それを悲しく思っていたけれど、そんな彼女が森にかけられた魔法を保ち、故郷を救うために伝説の魔法使いを捜す旅にでる。祖母のミーナと川の声が聞けるアルノーとタールと共にいくつかの困難を乗り越えていく。森にかけられた魔法の秘密、帝国に定められている奇妙な死の掟、伝説の魔法使いに託された指輪。どんどんストーリーは広がっていき、この世界を大きく変えて、ティルヤは故郷に戻ってくる。
 その間にティルヤ自身が持つ本当に大きなチカラに気が付くことになった。そして、それが彼女の心を強くし、新しい世界を拡げていくことになる。冒険に継ぐ冒険。どんどん大きくなっていく物語。その中で主人公の女の子がいつも希望を持ち、強くあったことが、このストーリーを明るくしています。祖母のミーナの存在感も大きいし、言うことを聞かないポニーのキャリコもラストにはすごい大変身を遂げてびっくりさせます。恋愛の要素はまったくないのですが、そのほうが潔くて、冒険に集中できると思う。
 こんなに面白い作品があまり知られていないのが残念。程よい重さがあってしっかりしたファンタジーなので、是非他の方にも読んでいただきたいです。

 同じ作者の作品をもう一つ紹介。

時計ネズミの謎

時計ネズミの謎

  • 作者: ピーターディッキンソン,エマチチェスター・クラーク,Peter Dickinson,Emma Chichester‐Clark,木村桂子
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 単行本
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 街の観光名所でもある大時計が100年経って動かなくなった。それを直せるのは時計を設計した職人の息子だけ。彼が時計のからくり人形を調べているとそこにはテレパシーを使うネズミたちが住んでいた。
 絵本に近い本です。でも読みごたえもあるし、なんといっても楽しい!子供が読んでも楽しいと思いますが、大人が読んでも楽しい1冊です。まずはタイトルに惹きつけられます。時計ネズミって何?それが楽しみの始まり。時計に住むテレパシーを使うネズミと時計と人間のお話。ネズミたちの生活の様子も楽しいのですが、人間の日常生活もネズミの生活も同じように書いてあるところが面白さの秘密だと思います。わかりやすい絵がついているのも楽しめます。