ペギー・スーシリーズ。

 女の子とその彼とおばあちゃんと青い犬の冒険談。なんといってもブラックユーモアに溢れているところが他の児童書とは違うところです。絶対絶命のピンチが続くのですが、なんとか最後には切り抜けられます。その過程で人間の欲深さや怠惰さを目にすることも。ちくっと痛い風刺が効いています。

ペギー・スー―魔法の瞳をもつ少女

ペギー・スー―魔法の瞳をもつ少女

 淡々と流れていく展開は楽しさよりも、心に落ちていくものの方が多かったように思います。救いになるのは、ほんの小さなチカラを持った女の子。そのチカラでさえも企みによって、今にも消え入りそうになるのです。青い太陽は頭脳を一時的に活発化させますが、そのことによって動物たちが言葉を話し、様々な要求を付き付けてきます。賢くなった動物、そしてそれに従わざるを得ない人間。そして、それをじっとみている太陽。ブラックユーモアも含まれているのでしょうが、それ以上に心が痛いなと思いました。人間以上に人間らしさを求めていく動物たち。そして、自分の子供を食べてしまいそうになる人間。人間の貪欲さも感じるし、それをみて喜んでいるであろうお化けたちにもなんともいえない不気味さを感じます。所詮は誰かの手のひらの上で転がされているだけの存在なのかもしれません。後をひく一冊だと思います。

ペギー・スー―蜃気楼の国へ飛ぶ

ペギー・スー―蜃気楼の国へ飛ぶ

 1作目よりもおもしろさは増した気がします。2作目の方がテンポよく読めました。次々に罠が仕掛けられていますが、最終的な目標がみえていることが、1作目よりも読みやすいのだと思います。前作で登場した青い犬がペギースーのいい相棒となり、この作品から登場したセバスチャンとの淡い恋も描かれているので、ちょっとペギースーもオトナになった感じ。それでも、ブラックユーモアが含まれているところは変わらず、蜃気楼の国でめいめいが勝手に動いている姿は、現代を写しているようでなんとなく不気味です。いくら食べても太らないおかし、それには実体がないし、欲望だけを剥き出しにしていることの滑稽さを面白くみせていると思います。誰かの夢の中の蜃気楼のような世界。だけど、その蜃気楼の中で生きることを選ぶ人達。生きるってどういうことなのでしょう。快楽に溺れているといつのまにか誰かに食べられてしまいそうです。

ペギー・スー―幸福を運ぶ魔法の蝶

ペギー・スー―幸福を運ぶ魔法の蝶

 大きくわけて前半と後半という感じがします。前半は蝶を稲妻から救うためにペギースーが戦う話。後半は蝶を追いかけて地底の国を旅する話。どちらも冒険ですが、後半の方が好きでした。なんといってもペギースーには欠かせないユーモアが感じられるからです。いままで幸福を与えられてきた人間たちが幸福を得ようと蝶に攻撃ともいえるものを仕掛けるなど、人間のどうしようもないところが描かれています。人間の悪いところは最初は本当にありがたいと思っていたころが、既得権になるともっともっとと欲張りになり貪欲なまでにむさぼることなのでしょうね。お化けたちとの戦いはラストであっさり書かれていましたが、あれで終り??となんとなく物足りなさを感じていたら、4冊目も出たらしいです。「番外編」はかなりブラックで1番気に入ってます。ペギースーとセバスチャンはあまりらぶらぶが続かないのが残念でもあり、ペギースーと青い犬のコンビの方が好きでもあったり(笑)

ペギー・スー―魔法にかけられた動物園

ペギー・スー―魔法にかけられた動物園

 ペギースーらしい面白さが詰まった1冊です。今回はブラックユーモアは控えめでしたが、こんな状況でラストは本当に解決するの?と思わせる展開はいつもどおり。なんとなく2冊目と同じ雰囲気がありますが、セバスチャンに青い犬、おばあちゃんと勢ぞろいしているところがさすがです。人間の心の弱い部分につけこんでくるところはさすがです。物語の世界から抜け出せない、携帯電話が手放せない、誘惑には弱い人間です。動物達もこのうえないくらいのショーに適した動物でしたが、それには落とし穴が。楽しいところや都合のいいことばかり考えていると大変なことを招いてしまうぞという警告なのかもしれないですね。ペギー・スーがかっこいいところはいろんな誘惑にも惑わされず、しっかりと行動していくところでしょう。怖いという気持ちだってつけこまれることがあるんですから。ラストはこのうえないくらいのハッピーエンドでしたが、やっぱりこれで終わるの?そんなのらしくないよねと思ってしまいます。