Endless SHOCK。

 今年も帝国劇場で夢を見てきました。EndlessSHOCKになってから3年。毎年拝見させて頂いているのですが、今年も去年とは違った感動を抱くことができました。こうして毎年拝見できているだけでも、本当に幸せモノだなぁと思います。今回は初めて1階のお席になりました。といっても、最後列なのですが、2階で見るのと1階で見るのはかなり違うなぁと思いました。今年の2階はちょっと羨ましいところがあったので、今年こそ2階だったらよかったのにとも思いましたが、初めての1階はは新たな発見がたくさんできました。
 今年は開演10分前に会場に駆け込んだために物販を見ている時間がありませんでした。いつもながらに華やかなお嬢様方を拝見するとうきうきします。帝国劇場に来られている方は私もそうなのですが、いつも以上におしゃれに気を使っておられますよね。スカートにしてもフロッキー柄やレース刺繍のスカートをたくさん拝見しました。そんなみなさんの装いを見るのも楽しみの一つです。私も帝国劇場にスキニージーンズでこられるくらい洗練された大人の女性になってみたいです。最後列だったのでゆったり座って開演待ち。今年はお隣に40台くらいのご夫婦が座られたのですが、ご夫婦で観劇ってすごく憧れです。一緒に素敵な時間を共有してくださる旦那様っていいですね。帝国劇場での夫婦観劇も私の夢の一つです。さて、ブザーと伴に開演。
 今年は1階だったためか映像がよく見えたので(2階だとよく見えないという意味ではないのですが、1階だと全面に見えたために)その映像を食い入るように見ていると、光一さんがすでに登場していました!(笑) オーケストラのコントラバスの方がくるりと回転させるところで、のだめに影響されすぎた私は「ベト7」みたいと思ってしまいました。そして、今年も華やかにダンスナンバー。光一さんの足先までがよく見えるのでびっくりしてしまいました。その振り上げた足の先、ステップを踏む足の先、そして手、首の角度。なんだかどれも練習と本番で鍛え上げられた魅せる角度の最高なんだろうと思うと、うっとりしてきました。最後列でこれだけ見えるのだから、もっと前ならどれくらい見えるのだろうと想像して悶え(笑)。今年のアキヤマはメガネ仕様。このメガネという小道具がよく利いていて、アキヤマというキャラがとても生き生きとして見えました。濃い顔と有名なアキヤマさんですが、メガネは意外に似合っていましたよ。今年は念願の金色マントのマジックのタネがわかったように思います。舞台の奥に行ったときに後ろのカーテンが揺れていたので、そのときにタネがあるんだろうとは思いました。他にも透明な硝子の台の上に光一さんが登場するマジックも、その台の後ろに登っていく光一さんの足が見えたりして、なんとなくわかりました。ダンスしているMAにもいろんな役割があって、例えばそのマジックのときに黒い布を剥がすようなのですが、その布を持っていることがわからないように舞台袖にひっこんだりとか、いままではそんなことがわからなかったのですが、舞台には細かにいろんな役割が振られているものなんですね。ここでアキヤマがブロードウェイの大物に声をかけられるというシーンが追加されてました。これで、ストーリーはわかりやすくなったかも。
 バックステージシーンではトウマくんの演技がこれまでのリョウやツバサとはまったく違ったものだったので、少し驚きました。でもこのバックステージシーンはいままでよりもずっとカンパニーが一つになっているという雰囲気が出ていました。このときはカンパニーは本当に結束していたんだと感じられるくらいに幸せな瞬間。トウマはとても明るいキャラクターで、カンパニーの雰囲気も盛り上げている印象でした。そしてカンパニーにとても溶け込んでいる。リカに対する気持ちもとても明るく表現されていて、屈託のない少年というイメージでした。コウイチの登場の仕方も清掃のおじさん仕様になっていて、コミカルで面白かったです。シャンパンには今年は電球まで点いて、きらびやかさが増していました。バックステージシーンはとても楽しい雰囲気で、そのまま屋上のシーンへ。リカがネックレスを渡し、コウイチが自分たちの可能性が無限なんだと語るシーン。ここはこの前のバックステージのシーンがとても良い雰囲気だったのが、そのまま生きているみたいで、コウイチにしてもトウマにしても、他のMAさんたちにしてもとても生き生きと輝いて見えました。MAのメンバーの役はどれもちゃんと役として確立しているようで、アイスが好きだったり、コウイチが好きだったりとすごく個性が見えました。そして、台詞も増えていたように思います。だからこそ、カンパニーの一人ひとりが個人としてきちんと見えるようになっていました。これまでは、カンパニーのメンバーという大きなくくりでしかなかったのですが、個人が見えるようになったことで主要メンバー意外のカンパニーの人たちの心が見えるようになったことは大きいなと思います。これから起こる出来事にしても、3人の間で起こっている出来事ではなくて、カンパニー全員に起こっている出来事であり、そしてラストに繋がっていく、その絆がよりわかりやすくなったように思いました。このシーンで歌われている曲がとても好きです。サントラには入らなかったけど、フレーズがずっと頭の中を廻っています。
 で、街のシーン。ここもダンスが変わりました。デート中の女性の奪い合いは芝居が細かくなったように思ったし、全員で踊るナンバーはカンパニーの結束を見ているように思いました。ナオキが登場して、コウイチのステージに対する気持ちが聞けます。そしてそれに対するカンパニーのみんなの考え方も様々。上手くまとまってはいましたが、このあたりから少しづつ亀裂を感じさせる内容になっていました。新聞を見るシーンはみんなで新聞を拡げていたので、わかりやすかったですし、アキヤマの台詞も追加されていて、「まだ早い」という言葉が印象に残りました。ここから大きく走っていくことになるカンパニーのメンバーたちに対して、アキヤマは不安を覚えているということがわかる台詞でした。沸き立つカンパニーに対して、不安の残るアキヤマ。そして、トウマはこのチャンスを逃したくないという気持ちが現れた台詞。今後がちらりと見える街のシーンです。
 オンブロードウェイのショー。ワールドアドベンチャーはやっと司会をしている男性の英語が聞き取れたので、このショー全体がわかったように思います。遅いですが…。アフリカのショーはフライングがスモークの中から飛び出してくるコウイチに変わっていました。このフライングはちょっとびっくりしたなぁ。スモークが結構舞台が見えないくらいに炊かれていたので、ほんとうにスモークの中から突然、コウイチが現れたように見えたのです。アキヤマとリカのチャイニーズタップシーンはちょっとかわいめ。それに続いてロックっぽいトウマのタップシーン。ちょっと残念だったのはアイリッシュのタップシーンがそのままその衣装だったこと。アイリッシュのタップシーンはとても好きなシーンの一つで、すらりとした足を見るのが楽しみだったのですが、チェックのあの衣装ではありませんでした。着替える時間がなかったのはわかっているんですけど、でもチェックの衣装がよかったです。スペインはコウイチのタップも毎回かっこいい。そして、今回もタップ靴の履き替え『萌え』。ちゃんと椅子まで用意されて、そこに座って堂々と靴を履き替えるのです。素敵です。そして脱がれたお靴もまるで宝物のようにダンサーさんの手によって舞台袖に運ばれていくのです。今回はなぜかその靴が運ばれていく一部始終を凝視で見てしまいました。毎回だけど、このシーンは『萌え』、に尽きます。
 幕間のシーン。ここは緊迫感のあるシーン。これまでトウマのキャラクターがあまりにもカンパニーに溶け込んでいたために、このシーンをどう演じるのか想像がつきませんでした。コウイチとのライバル関係があるようにも感じられなかったし、とても屈託のないトウマ像だったからです。「今、立ち止まったら終わりがくる」というコウイチの台詞。台詞自体はこれまでと同じだったのですが、私の中ではなにか違って響きました。トウマが刀に目を向けてそれを少し抜くシーンが追加されていました。そのときにトウマは思い立ったのだということがわかりやすくなっていました。ここでも、アキヤマが「早すぎると思った」という言葉を口にします。後ろを振り返ったアキヤマ、走っていこうとするコウイチ、自分の存在を見いだそうとするトウマ。その交錯がよく見えました。その中でもカンパニーはまとまろうとするんですね。ヤラくんだったと思うのですが、次の幕に向けて準備しようといいます。そして、仲がよすぎたカンパニーだからこそ、その溝をはっきりと解決することなく、そのまま前に進もうとするのです。だからこそなのかな、自体は大きくなってしまった。お互いに知りすぎてもいたし、知らなすぎてもいた。信じ合っていたからこそ、本音が言えない状況でもあったし、わかってくれると思って、言葉を尽くさないでもいた。それが違う方向に向いてしまっていることに気が付いていたけど、そのまま走ってしまった。
 ジャパネスクはいつもながらにすごい迫力。コウイチもトウマも本気でぶつかって、ぶつかって、斬られては斬り返して。それが男同士の語らいなのかもしれないと思ったりもしました。そうやって役柄としてぶつかることによって、お互いにお互いの気持ちを知らせたかったのかなと、そして葛藤も全部ぶつけたかったのかなと。コウイチが客席中央通路から登場するところは迫力。飛んでくる矢を取るというシーンなのですが、それあがスピード感とあまりにも近い距離感で展開されていて息を飲みました。トウマが最初は布を被っていて、途中で脱ぐというのもいい演出だと思います。たぶん、この劇中劇の中でもトウマは仲間だったのに裏切ったというようなそういうストーリーなんじゃないかと思うのです。階段が登場してからのコウイチさんの殺陣はいつも痛くて辛いものです。その一歩一歩がすごく重くて、その顔にすべてが出ているようで迫力に押されて怖いくらいでした。剣を手放すシーンも剣が飛んでいったので、わかりやすかったですし、コウイチの挑発やそのあとトウマを脇に押しやる姿や真剣におののくシーンも見事に表現されていました。階段落ちはいつも頭が左側だったと思っていたのですが、右側にして転がり落ちていかれたので、ちょっとどきどきしました。階段落ちのあと、這って行くシーンがまた辛い。その表情もなにもかも辛い。そのときのコウイチが何を考えていたのか、きっと終わらないショーのことを考えていたのか、疑いなのか確信なのか私にはわかりかねました。
 30分の休憩中。パンフレットを買えてなかったので、2階にいって買いました。列さえもありませんでした。すんなり購入。コウイチさんのステージフォトはかなり種類が多くって、みなさん紙を片手に選んでおられましたよ。そのあと、何を思ったか帝国劇場の地下に行ってみようと思い立って、地下にいってみました。何があるのだろうと思っていましたが、そこは飲食店街でした。さらに地下2階へ。クッキングスクールがありました。あまりにも普通の空間が拡がっていてすこしびっくりでした。探検しているうちに時間も迫ってきたので、席に戻りました。現実と非現実の境界はそんなにはっきりとはしていないらしい。チケット1枚で越えられるものなんだ。
 「In The Cemetery」で始まり。やっぱり好きだ。2年前はこのときのコウイチの衣装にひらひらした包帯にも見える白いリボンがついていたのだけど、去年も今年もついてなくて、ちょっと淋しい。このあとのときに邪魔なのかもしれないけれど、あのひらひらのリボンが好きだったので、是非復活させてほしいです。シェークスピア劇はトウマの演技がすごかったです。足を引きずって演技するトウマの迫力に圧倒されました。ここで台詞が少し増えているのか、リカとトウマの短剣で殺してくれというシーンはこのあとに繋がるんだと今更知りました。ロミジュリの「唇が温かい」という台詞もそうだけど、よくよく見ていると本当にいろんなところでリンクしているシェークスピア劇です。リカ役のまりかさんの声がアニメ声なので、ちょっとシェークスピア劇には合わないのかなぁとも思いました。演技としては恋する感じは出ていたと思うのですが、リチャードのところとかはちょっと軽くなってしまったかもしれない。
 戻ってきたコウイチシーン。今回は清掃のおじさんルックで登場。会場を笑いが包んでいた。その他にも「ナイスアングル」で魅了していたり、おおげさにピアノで驚いてみせたりしてこのあたりの明るさもパワーアップしていたかも。リカがコウイチに抱きつくシーンも離れたくない気持ちと現実との間で揺れていたからだろうし、なにもないような顔で笑うのもつらかっただろう。戻って来たシーンでよかったのはMAとのステッキのナンバー。これまでは素敵なおばさまとのショーだったのですが、今回はMAというカンパニーのメンバーとのナンバーが復帰の最初だったのがよかった。もどってきたんだという感じが伝わっていたし、カンパニーのメンバーのうれしさも表現できていたと思います。トウマのショーから「Why don't you dance with me?」トウマのダンスは初めて拝見したのだけど、動きが少し固めかなぁ? ギリギリでやっているショーに対する気持ちや気負いはすごくよく伝わってきたように思いますが、荒々しさも感じられました。髪型を前半と変えているのはトウマの心の変化の現れがよく見えました。それだけ追いつめられた状況でそれでも自分を奮い立たせてやってきたという、気持ちのとげとげしさが見えたのです。いろんなものに対する対抗心というのか、とがった印象。触ることが怖いくらいのトウマの感情。
 この後の真実を知ってしまうシーン。リカの心の葛藤。トウマの心の葛藤。いろいろあったのですが、今年はコウイチのこの台詞が一番心にきました「すべてを受け止めるさ」 この台詞のニュアンスがやっとわかった。そして、この台詞の重たさがやっとわかった。純粋な決心でもなく諦めでもなく、ただそこにある現実を現実として認識することの大きさ。それがこの台詞には込められているんだと。リカやトウマの心もすごく大きくて迷ってはいたけれど、結局、コウイチのこの台詞にはかなわないのかなぁと。消えていくという現実を目の当たりした今でもそれでも前を見ていける強ささえももっているこの台詞。トウマが壊してしまいたかったコウイチの強さがこの台詞に出ているような気がする。トウマが羨ましくて、壊したかったのは、たぶん、コウイチの未来への眼差しなのだろう。今を必死で生きているトウマにとっては、今を生きた上で明日さえも見ているコウイチが遠かったのだろう。そうやっていつまでも前を見ることのできるコウイチの強さがあまりにも強すぎて、どうにかして壊してしまいたかった。そうすることで、ただ、今というものをみてほしかったのかも。自分なりに前に進むということ、それが途方もなく大きいことだったけれど、コウイチにはそれ以上を期待されていた。トウマはコウイチを超えるということは考えていなかったのではないかな。ただ、コウイチや仲間たちと一緒に走っていきたかった。トウマのとった行動は大きなものだったけれど、トウマの心は子供のように思える。コウイチが遠くにいってしまうのを、引き寄せたいと願うそんな気持ちからだったのだと思う。一緒に作り上げたカンパニーの絆。一緒に踊った屋上。トウマにとってそれが一番大切なものだったし、それはきっとリカという存在があったにしても、そのリカよりも大切だったと思える。だから、それを一緒に守っていきたかった。トウマはきっと立ち止まったのだ。走っていくコウイチの背中が小さくなっていくのを感じてしまったのだ。だから、その手を引いた。そういうことなのだろうと思う。トウマの演技がここでもすごくよかった。コウイチの手をとり、その温かさが感じられないことに少し戸惑う。でも、またその手を取って「一緒に舞台に立ちたい」という。そのとまどいと決心が現れたその演技がトウマの成長を思わせた。そして手を握るというその行為がトウマの心を表しているように思えた。それがカンパニーの絆を取り戻した瞬間のように思えた。心を繋ぐことは難しいことだったけど、手をとる、それだけですべてが分かり合えるのかもしれない。…トウマはカンパニーに戻ってきた。
 最後のステージの始まり。真っ赤な布の下にはたくさんの人がいることを知った。その幕の一つ一つに人がいて、あの角度を保っているのだとわかった。ナオキのドラムのテクニックが年々すごくなっているように思う。くるりと廻るスティックが当たり前のように音を生み出すけど、リズムは早くなる。そのあとのコウイチのリボンフライングは2パターンを続けて! どこまですごくなっていくんだか。フライングのあとすぐに和太鼓のセッション。力を保ち続けられる光一さんの体力にほれぼれとしてしまう。この太鼓のシーンもかなり難易度が増しているようで、体力的にも辛そうだったけど、テクニックとしても上がっている。ジャンプしながら音を出す鳴り物があったり、身体全体で音を出すものがあったり、太鼓のセッションは見所が多くなっていた。そのあとのトウマのところもかなり変わっていて、これも面白かった。このあたりのテンポはかなりよくなっていたし、みていてすごいなーと思うことも多かった。
 そしてラダーフライングです。このフライング。なんだかすごくなりすぎているんですけど!! まず舞台から飛び上がって最初の梯子に掴まって、次々に飛び移るところまではいままでと同じなのですが、それからがすごい。いったん舞台の梯子のところに戻って一直線に2階席へ。2階席に降りたって、両側に挨拶しているようでした(私は見えないところだったので、映像によると)。そのあとも梯子の一つ一つにいる方と手を叩いていくフライングがあり、やっと梯子に帰還。この間、どれくらいだったんだろう。かなり長く感じました。フライングとしてはこれ以上すごいのはなさそうと思うくらいでした。初めて下からフライングを見たのですが、なんだかヒヤヒヤしてみてしまいました。見上げるというのはこういうことだったんですね。ちゃんと梯子が掴めるのかちゃんと降りてこられるのかとか、不思議にどきどきしていました。マスクは毎回楽しみなシーン。ファイアー剣が進化しているように思えました。鞘から抜くだけで炎がでているだなんて、なんだかすごく怖い剣じゃないですか。
 『夜の海』このシーンの衣装が真っ赤だったことに今更びっくりしました。この曲は何度聞いても良い曲だなぁと思えます。曲中の台詞もありました。この台詞によっていろんな気持ちがわかっていきます。実際、舞台をコウイチとともにやったことであのときの決心が本当にどうだったのか、リカもトウマも思うところがあって、それをこうやって曲中で聞けるということがすごく大きい。この曲の最後でふわっと上から花びらが落ちてきます。そしてそのままコウイチが倒れる。舞台の真ん中で倒れるのです。これが一番大きな変更かなと思いました。そのまましばらくそこでコウイチが横たわっているのですが、その光一さんの胸が抑えていてもかなり大きく息をしているのがわかって、この舞台の激しさを思わせました。次の『大桜』で横たわった光一をカンパニーのみんなが桜の下に運びます。コウイチが去ってしまったことがはっきりとわかる演出になっていたし、カンパニーのみんなの気持ちも伝わってきました。コウイチが残していったものがしっかりとカンパニーのみんなの心にあって、それがよくわかりました。そして、フィナーレ。カーテンコール。光一さんの挨拶のあとに、当たり前のようにみんなが立って拍手を送りました。初めてでした。立って拍手したの。それだけこの会場のみんなの心に残るものがあったのだと思っています。涙ぐんだり、笑ったり、一緒に舞台を観たこの時間を共有できたみんなの気持ちもなんとなく一緒になっていたかも。
 いつも毎年違ったことを感じます。今年も感じたことは違っていた。それはキャストが変わったことにもあったように思います。これまで2回は錦戸さんのリョウを見たのですが、今回は生田さんのトウマでした。リョウとは随分印象も違っていて、それによってこの舞台自体も随分変わっていました。コウイチに対する思いも違っているのだから、違ってきて当然なのかもしれないですけれど。それにMAの4人も役柄として確立されていました。カンパニーがとてもはっきりと個人として認識できたのは今回が初めてかもしれません。だから、3人だけのことではなく、カンパニーとして成長したストーリーだということをしっかりと確認できたように思います。今年はやっぱりコウイチの強さや前向きさが一番心に残りました。完璧すぎるように思えてコウイチの心を推し量ることはいままでなかったのですが、コウイチにも人としての弱い部分や自分を通してしまった部分があるように思いました。それに気が付けたので、コウイチという人物をきちんと見ることができたように思います。これまではコウイチのすることは絶対に正しいというようなある意味リカっぽい発想に立っていたところもあったので、コウイチの心を考えてみようとは思いませんでした。だけど、コウイチにはコウイチとしてすごく大きな夢があり、仲間がいて、そしてコウイチだって不安だったのだろうと思うのです。走って走って走り続けていたからこそ、前を見る以外のことができなくなっていた部分もあると思うんです。だれよりも一番不安だったのかもしれないと。だけど、そういうことを見せる人ではないために、コウイチを理解する人は少なくなってしまったのかもしれません。まだコウイチの心は私には謎が多くて、近づくことはできないです。人と人との関係ってすごく難しいけど、でも人ってやっぱりあったかいんですよ。コウイチの手のぬくもりが感じられなくなっても、それでもコウイチの笑顔はあったかかった。そのぬくもりこそが生きていくことで、そして希望なんだと思えます。結局はそれかな。リカが抱きしめたことやトウマが手を取ったこと。コウイチを運んだカンパニーのみんな。温かさを感じることができた気がします。
 今年も帝国劇場に来ることができて本当に素敵な時間を過ごすことができました。また来年もこの感動が味わえますように。そして、81公演もこんなに素晴らしい舞台を作られているみなさんにありがとうを伝えたいです。千秋楽までがんばってください。