大どろぼうホッツェンプロッツ。

大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))

大どろぼうホッツェンプロッツ (新・世界の子どもの本―ドイツの新しい童話 (1))

 児童書らしい児童書をご紹介。でも、大人も十分楽しめる作品です。とにかく面白いです。どこがどう面白いのかと言われると、言葉にするのは難しいのですが、いつのまにか読み終わっていて、読後は「おもしろい」って感じなんですよね。理屈とかつけるのが難しいような。大どろぼうを追いかけている2人も大どろぼうもすごくマジメなんだけど、その行動がちょっとしたところで抜けていたり、こんがらがっていたりと普通とは違う何かがあります。魔法使いがとにかくじゃがいも好き。そんなところもちょっとおかしい。そんなちょっとしたおかしさが集まって、おもしろさになっています。挿絵の脇の一言がとにかくいい味です。


 すぐに脱走した大どろぼう。今回もマジメにやっているけど、楽しいです。端からみている分には。警官がが捕まえられてしまうのですが、この警官がとってもおかしい。樽に入れられて運ばれたり、制服のボタンが全部とられてしまったり。そして、ワニ犬!ワニ犬がとてもいいキャラクターです。大どろぼうだってかしこいようで、いかにもな演技に騙されてしまうあたり、悪いヤツとは思えません。このシリーズを通して思うのですが、大どろぼうなのに、全然怖くなくて、全然悪いヤツという気がしなくて、どちらかというと好きなところが魅力です。(でも、大どろぼうとしては十分怖いつもりなんですよ。)


 大どろぼうが改心します。それも唐突に(笑) 唐突すぎて誰も信じません。それはそうでしょうね。おばあさんも今度ばかりはと会心の演技。いつもの2人もわなを仕掛けて自分ではまったりといつものごとく(笑) ワニ犬の魔法を解くために必死な2人の努力は実るのでしょうか。そして、大どろぼうは本当に改心したのでしょうか。ラストは大団円。最後まで人間のおかしさと楽しさを嫌味なく書ききっていて、文句なく楽しいシリーズです。